訪問介護と訪問看護の違いを解説!適切なサービスを選択しよう
「最近、親の一人暮らしが大変そう…」
「親の生活を手伝ってきたけど、最近きつくなってきた…」
このような悩みを抱えている人も、多いのではないでしょうか。
自宅での暮らしを続けたくても、高齢になるとできなくなることが増えてきます。
そこで、「支援が必要となってきた高齢者さん」が自宅で生活するため、取り入れたいサービスが訪問介護や訪問看護です。
今回「みーつけあ」では、「訪問介護や訪問看護でどのようなお手伝いができるのか」を解説します。
料金や、どちらのサービスを利用すべきかといった観点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護と訪問看護の違いとは?
訪問介護と訪問看護の内容を見たときに、どちらにも同じサービスが含まれていて迷ったことがありませんか?
似たようなサービスに思えるかもしれませんが、訪問介護と訪問看護には、利用できる保険に明確な違いがあります。
- 訪問介護は介護保険内のサービス
- 訪問看護は医療保険も利用できるサービス
2つの違いを踏まえて、どのような内容なのかを理解しましょう。
訪問介護は介護保険内のサービス
訪問介護は、介護保険で依頼できるサービスです。
介護保険の対象者は、以下の要件が定められています。
- 65歳以上である(第1号被保険者)
- 40~64歳までで医療保険に加入していて特定疾病により介護が必要(第2号被保険者)
参考:介護保険制度について
上記の要件を満たしたうえで、行政により「要介護の認定を受けている」人が利用可能です。
介護保険サービスを受ける資格のある人には、65歳の誕生日に市町村の役所から介護保険被保険者証が送られてきます。
介護保険被保険者証を受け取り、「介護認定を受けて手続きをする」ことでさまざまなサービスが受けられるようになります。
訪問介護で受けられる主なサービスは、以下の表のとおりです。
生活支援 | 身体介護 |
---|---|
・買い物代行 ・掃除 ・洗濯 ・調理 | ・排泄介助 ・入浴介助 ・食事介助 ・移動介助 |
訪問介護のサービスは、「利用者さんの生活周りを中心とした支援」が主な内容になっています。
サービスにかかる時間は、おおむね20分未満から90分以下です。
このように、介護保険ではさまざまなサービスが受けられます。
しかし、介護度が要支援の場合は、受けられるサービスの範囲が限られてしまいます。
また、本人の状態や介護度によって支給される「サービスの時間数」が違うため、ケアプランを作成するときは注意が必要です。
訪問看護は医療保険も利用できるサービス
訪問看護も訪問介護と同様に、基本的には介護保険で利用するサービスです。
しかし、医療保険も利用できる点が、大きく異なります。
医療保険では、介護保険の対象にならない赤ちゃんから64歳以下まで、必要に応じて幅広い年代で利用可能です。
利用条件としては、主治医の「訪問看護指示書」が必要になります。
訪問看護は、「医療行為を伴うケア」が受けられるサービスです。
具体的には、以下のようなサービスが受けられます。
- 血圧・脈拍・体温などの測定
- 病状チェック・管理
- 在宅酸素・カテーテル・ドレーンなどの器具管理
- 褥瘡の処置
- リハビリテーション
- 看取り
- 胃ろうや喀痰吸引
上記の内容に加えて、訪問介護でも受けられる以下のサービスも受けられます。
- 排泄介助
- 入浴介助
- 食事介助
利用回数には制限があり、基本的に週3回までです。
訪問できる時間は、訪問看護も訪問介護と同じく20分未満から90分となっています。
ただし、特別訪問看護指示書として、看取りや医師の指示があった場合は、1週間に訪問する回数の制限がなくなる場合があると覚えておきましょう。
2.訪問介護と訪問看護の料金の違い
ここまで、訪問介護と訪問看護の全体的な違いを解説しました。
2つのサービスは、利用料金も異なります。
この項目では、利用料金の理解を深めるために、以下2つの内容を確認してみましょう。
- 訪問介護と訪問介護の介護保険料金を比較
- 医療保険を利用すると割高になる場合がある
それぞれについて確認すると、依頼時の費用もある程度把握できます。
より理解を深めて、依頼が円滑に進むようにしましょう。
訪問介護と訪問介護の介護保険料金を比較
介護保険での利用料について、訪問介護と訪問看護の料金の違いを、以下の一覧表にまとめました。
訪問時間 | 訪問看護 | 訪問介護(身体介護) |
---|---|---|
20分未満 | 327円 | 174円 |
30分未満 | 490円 | 260円 |
30分以上60分未満 | 858円 | 412円 |
60分以上90分未満 | 1173円 | – |
参考:厚生労働省 訪問看護の報酬・基準
厚生労働省 訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等
それぞれ、1回あたりの利用料金で、1割負担として計算した内容です。
また、事業所の地域によって、上記の料金は変動があります。詳しい内容は、お住いの自治体で確認してください。
上記の表より、「医療行為が行える、専門性の高いケアが受けられる」といったメリットから、訪問看護のほうがやや料金が高くなっていることが分かります。
一方で、訪問介護は利用者さんの生活を支えるケアが中心のため、やや安めの利用料金に設定されているようです。
また、訪問介護と訪問看護どちらも「初回加算」というものが付随して請求されることがあります。
訪問介護の初回加算 | 約200円 |
訪問看護の初回加算 | 約300円 |
参考:厚生労働省 訪問介護・訪問入浴介護
厚生労働省 訪問看護
訪問介護で加算が利用料に含まれるのは、以下の要件を満たす場合です。
- 過去2カ月利用がない
- 新規訪問介護の計画が作成されている
- 利用開始月にサービス提供責任者がサービスを提供する
- 利用開始月にサービス提供責任者が介護員のサービスに同行する
また、訪問看護では、以下の要件を満たす場合に算定されます。
- 過去2カ月利用がない
- 新規訪問看護の計画が作成されている
負担額については、地域によって差があります。
詳細は、お住いの市町村窓口にお問い合わせください。
医療保険を利用すると割高になる場合がある
訪問介護、訪問看護とも介護保険を利用した場合であれば、所得に応じて1~3割負担でサービスを受けられます。
その一方で、訪問看護は医療保険も利用できるのが大きな違いです。
介護保険に追加してサービスが必要である場合は、医療保険と介護保険を併用できます。
しかし、医療保険は6歳以上70歳未満で利用料金の3割を負担、70歳~75歳未満では原則利用料の2割負担です。
そのため、医療保険は年齢を問わず利用できるなどのメリットはあるものの、所得や年齢によっては、割高になってしまうこともあります。
3.訪問介護と訪問看護の違いから分かるそれぞれのメリット
ここまで、料金や大まかなサービスの違いについて書いてきました。
では、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。
- 訪問介護のメリット
- 訪問看護のメリット
メリットを確認すると、依頼時のイメージも分かりやすくなります。
訪問介護と訪問看護のサービス内容の違いから、それぞれの具体的なメリットを確認しましょう。
訪問介護のメリット
訪問介護では主に「日常に密着した利用者身辺のお手伝い」をメインとしています。
「洗濯さえできれば…」
「買い物さえできれば…」
このようなニーズに対応可能です。
また、「料理や掃除はできるけれど、最後まで集中力が続かない」といった場合もあるでしょう。
上記のような状況では、利用者さんの力を生かして行う「自立支援サービス」で、できることを応援できます。
その他、食事介助や入浴介助、排泄介助など身体にかかわるケアも可能です。
▼訪問介護にできることに関しては、以下の記事をご参考ください。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
訪問看護のメリット
訪問看護では医師の指示に基づいた、医療行為を受けられます。
「術後のケアはどうしたらいいの?」
「血圧が不安だけど、お風呂には入りたい…」
「ご飯を一人では食べられなくなってきたので、手伝ってほしい」
このような、専門的ケアが必要なニーズに対応しています。
また、健康面の相談にも乗ってもらえるので、健康上の不安を解消できる点がメリットです。
さらに医療の知識があるので、ご家族へケアの助言やアドバイスもできます。
健康面に大きな不安がある利用者さんには、とても頼りになるサービスです。
4.訪問介護と訪問介護はどちらを選ぶべき?
訪問介護と訪問看護は、それぞれ違ったメリットがありましたね。
メリットから考えて、「どの訪問サービスを受けたいか」も考えておきましょう。
訪問介護と訪問看護では、ケアマネジャーに相談して、ケアプランを作成してもらいます。
どちらを依頼すべきか考える際には、まずサービスを受ける利用者さんが「どの要件を満たしているのか」の確認が重要です。
- 医師の指示がなく要介護認定のみ受けられる場合は訪問介護
- 医師の訪問看護指示書がある場合は医療保険で訪問看護
- 要介護認定と訪問看護指示書の両方がある場合は訪問介護・訪問看護の両方
受けられる要件を確認したら、「どのようなサービスが必要なのか」希望をはっきりと定める必要があります。
なぜなら、ケアマネジャーに必要な介護や看護をはっきり相談できれば、ケアプランの作成をスムーズに進められるためです。
「どちらかのみを利用する」と決めて計画を作成するよりも、専門家と相談しながらサービス内容を決めることで、充分なサービスを選ぶべるでしょう。
5.在宅介護が必要になったとき準備すること
ここまで紹介してきたように在宅介護が必要な場合は、さまざまな支援を受けられます。
しかし、サービスを受けるためには事前に以下のような準備も必要です。
- 要介護認定の申請をする(認可まで1か月程度)
- 介護認定の通知を受け取る
- 居宅介護支援事業所へ依頼
- ケアマネジャーを選定
- ケアマネジャーとともにケアプランの作成
- 各事業所を選定し契約
訪問介護と訪問看護の両方で、欠かせない手続きとなっています。
在宅介護が必要になったときには、必ず手続きを済ませておきましょう。
また、在宅介護を本格的にはじめるには、専門家の知識が必要です。
個人で準備を進めてしまうと、過不足が発生して、お金も手間もかかってしまいます。
状況によりますが、現在の住環境では生活が難しいと判断されることもあるでしょう。
たとえば、利用者さんが今後充分な生活を送るためにバリアフリーの自宅環境を整備する必要があるかもしれません。
上記のような、介護に関する悩みを相談できるのが、ケアマネジャーです。
居宅介護選事業所で選定してもらっているケアマネジャーは、在宅ケア連携の中心に位置する役割を持っています。
そのため、事前準備についてもケアマネジャーと相談しながら行いましょう。
補助金や福祉器具レンタルなどを教えてもらえるので、効率よく事前準備を整えられるはずです。
ケアマネジャーや事業所と考え方が合わないと感じた場合は、担当の変更もできます。
合わないときは「この人とは合わないので交代してほしい」とはっきり伝えるとよいでしょう。
▼訪問介護サービスを始めるまで流れについては、以下の記事もご参考ください。
>>介護ヘルパーを依頼するまでの流れとは?各サービスの料金や種類についても紹介
訪問介護と訪問看護の違いで知っておきたいQ&A
最後に、訪問介護と訪問看護の違いで知っておきたい内容をQ&Aとして紹介します。
知識として知っておくことで、依頼時に想定外のトラブルが起きるといったことが避けられるでしょう。
よくある質問を、以下の順番で解説します。
- 訪問介護と訪問看護は同じ時間帯に依頼できる?
- 訪問看護と通所リハビリは併用できる?
- 在宅看護と訪問看護はどう違うの?
気になっている疑問がないか、確認してみてくださいね。
Q1.訪問介護と訪問看護は同じ時間帯に依頼できる?
A.訪問介護と訪問看護の同時利用は、基本的にできません。
厚生労働省によれば、 利用者さんは、同一時間帯に1つの訪問サービス利用が原則とされているためです。
同時のサービスが必要な場合は申請して、行政の許可を得る必要があります。
ただし、同じ日の違う時間帯であれば、訪問介護と訪問看護両方の利用が可能です。
Q2.訪問看護と通所リハビリは併用できる?
A.訪問看護と通所リハビリは、目的が異なるため併用できます。
また、訪問看護ステーションから理学療法士や作業療法士などのスタッフを依頼しつつ、通所のリハビリサービスの同時利用も可能です。
両方の利用が必要な場合は、ケアマネジャーに相談してケアプランを作成してもらいましょう。
Q3.在宅看護と訪問看護はどう違うの?
A.在宅看護は、「自宅で身内が看護する」ことを指します。
病状が安定している・病状が慢性的等の状態の場合は、在宅看護をすでに行っている場合もあるでしょう。
在宅看護では、病状をかかりつけ医に相談しながらケアします。
そのため、在宅看護では、緊急時や急変時に備えてかかりつけ医を決めておくことが大切です。
訪問看護はスタッフが定期的に訪問して、健康状態のチェックや必要に応じて医療処置が受けられます。
訪問時、ご家族の相談に乗ることもできるため、ご家族の不安も解消できるでしょう。
まとめ:訪問サービスはうまく組み合わせて活用しよう
今回「みーつけあ」では、訪問介護と訪問看護の違いを解説しました。
訪問介護と訪問看護には、それぞれ異なるメリットがあります。
どちらでも活用できれば、在宅介護の大きな助けになることは変わりありません。
しかし、専門知識を持たないまま、ご家族や身内のみでサービスを組み合わせるのは難しいです。
市町村の窓口や居宅介護支援事業所をうまく活用して、地域の情報を収集しましょう。
ケアマネジャーに相談すれば、無理のない在宅介護サービスの計画も立てられるはずです。
定期的にケアプランの見直しもできるので、利用者さん本人の安心安全な生活につながるでしょう。