訪問介護のクレーマー対処法!正しく対処してトラブルを回避しよう
訪問介護のクレーマーに対して正しい対処法を理解しないまま、「とりあえず謝る」という方法をとっていないでしょうか。
問題解決のためには、まず相手の話を聞くことが大切です。
しかし、理不尽な要求や言いがかり、暴力などがある人に対しては、相応の対応をとらなくてはエスカレートする可能性もあります。
今回、「みーつけあ」では、訪問介護で実際にあったクレーム事例をはじめとして、正しい対処法や注意点をまとめました。
クレーマーだと思っていた人が実際はそうではなく、自分に問題があったというケースもゼロではありません。
どういった要求や意見が、クレームに該当するのか確認しましょう。
1.訪問介護で実際あったクレーム事例3選
訪問介護で実際にあったクレーム事例を、3つ紹介します。
- 家族がクレーマー
- 訪問介護員から感染したと提訴
- ミスを見つけては執拗に文句を言う
何かにつけて文句を言いたい人や、人のミスが気になって仕方がない人がいることは事実です。
完璧主義の人は、クレーマーと勘違いされやすい傾向にありますが、問題点はそのしつこさにあるのかもしれません。
紹介する3つの事例を確認し、同じような状況が起きたときにクレーマーなのかそうでないのかを判断しましょう。
事例1.家族がクレーマー
家族がクレーマーという事例は、じつは珍しくありません。
利用者さん本人はとても温厚な人で、訪問介護員との関係が良好な場合でも注意が必要です。
なぜなら、突然家族の人から身に覚えがないことを言われる場合があるからです。
場合によっては、苦情を受ける事態に発展する可能性があります。
- ここに置いてあったお金を盗んだでしょう?
- この前、あなたが帰ったあとトイレに入ったらトイレットペーパーが減っていたわ
- 母の足に小さな引っかき傷があったんだけど、これって虐待だよね
お金や物を盗んだと言われても、録画でもしていない限り、盗んでいないという証拠をその場では出せません。
また、家族が同居していたり、利用者さんが自力でトイレに座れたりする場合には、トイレットペーパーが減ることは当たり前です。
さらに、小さな傷がどこでついたものか不明なうえに、「虐待だ」と言われてしまっては立場もありません。
家族の場合、利用者さんとは異なり、人付き合いや仕事でのストレスをぶつけてくることもあります。
家族がクレーマーであるために、利用者さんまで訪問介護事業所から嫌がられてしまうケースもあるほどです。
事例2.訪問介護員から感染したと提訴
新型コロナウイルスが原因で、82歳の天寿をまっとうして亡くなった女性のケースです。
女性の遺族が「訪問介護員から感染した」と、訪問介護事業所の運営会社に損害賠償を求めたニュースがありました。
訪問介護員が陽性の状態で、マスク・消毒なしで感染症予防もせずに訪問介護をしていた場合、訪問介護事業所が悪いといえます。
しかしこの場合は、「訪問介護員が訪問しなかったら防げた」という主張があったため、「言いがかりだ」とネット上で非難が多くありました。
ただし、訪問介護員は「発熱と味覚・嗅覚異常があったが、翌日にいったん症状が改善した」という状態での訪問でした。
そのため、完全にクレーマーといえるような案件ではありません。
しかし、もし訪問介護員が陰性で、感染症対策をおこなったうえで適切に訪問していた場合はどうでしょうか。
こうした背景から、単純に言いがかりをつけたいだけの人とも考えられる難しい事例です。
事例3.ミスを見つけては執拗に文句を言う
人のちょっとしたミスを見つけて新人いじめする人。
人の行動をとても細かく観察し、逐一文句をつけるクレーマーもいます。
訪問介護でみかけるクレーマーのなかでは、このタイプはわりと多いかもしれません。
- いま何したの?こんなことするなんて信じられない
- 人として神経を疑うわ
- なんでこんな簡単なことで間違うの?
- なんでこんなこともできないの?
- 私ならもっとこうしていたわ
- 別にあなたに来てほしいわけじゃない
- もっといい介護士に変えようかな
このように、一見モラハラともとれるような発言を浴びせてくる人もいます。
完全に自分に落ち度があるミスの場合、利用者さんから苦情の1つくらいあってもおかしくありません。
しかし、あなたにまったく関係のないところや、別の要因が招いたミスに対して執拗に文句を入れる場合には、要注意です。
今後も細かいミスに対して、関係のない点でクレームを言われる可能性があるでしょう。
2.訪問介護で見かけるクレーマーってどのような人?
訪問介護で見かけるクレーマーとは、具体的に以下のような人を指します。
- 理不尽な言いがかりをつける
- 物を投げつけたり怒鳴ったりする
- 理不尽な要求や意見をする家族のこと
理不尽な言いがかり、要求、意見をする家族や利用者さんをはじめ、物を投げつけたり怒鳴ったりと暴力的な家族や利用者さんです。
そもそも「クレーマー」とは、商品の欠陥や客への対応の仕方などについて、しつこく苦情を言う人のことを指します。
アドバイスや意見ではなく、おかしな言いがかりと受け取れる場合です。
訪問介護でも、クレーマーは同じような人のことを指しますが、より具体的にどのような人なのかを確認しておきましょう。
急な対処を求められたときに、見分けがつきやすくなります。
その1.理不尽な言いがかりをつける
理不尽な言いがかりをつける人は、典型的なクレーマーです。
「これを捨ててほしい」と言ったにもかかわらず、「さっきダメっていったのに」「捨てるなんてひどい」など、理不尽を言う人です。
クレーマーに対して、「でもさっき捨ててほしいって言いましたよね?」と言っても意味はありません。
「私が嘘をついているっていうの?」と、余計にクレームが大きくなっていくでしょう。
認知症の利用者さんであればクレーマーではありませんが、そうでない場合には立派なクレーマーと考えられます。
その2.物を投げつけたり怒鳴ったりする
訪問介護員に物を投げつけたり、怒鳴ったりする人は、とても厄介なクレーマーです。
カッとなって手が出てしまう人は、年齢問わず存在します。
しかし、訪問介護員が何もしていなくてもいきなり暴力をふるうような人は、とても危険です。
こちらも認知症の場合にはクレーマーとは言えませんが、そうでない場合にはクレーマーといえるでしょう。
訪問介護員の身が危険にさらされることもあるため、事業所側は要注意人物として契約を見直すべきでもあります。
その3.理不尽な要求や意見をする家族のこと
理不尽な要求や意見をするのは、利用者さんだけではありません。
その家族の人が、クレーマーの可能性もあります。
たとえば「洗濯くらいやってから帰ってくれてもいいのに、全然サービスしてくれない」といったようなものです。
家政婦ではなく介護士であることを正しく理解してもらえず、お手伝いさんのように考えている人もいます。
「これくらい少しだからよいか」と安易に引き受けてしまうと、要求がエスカレートしていく可能性があるため注意が必要です。
3.実はクレーマーではない具体的な3つのパターン
理不尽な要求だと思い込んでいるだけで、実はクレーマーではない場合もあります。
自分自身や事業所に問題があったのに、相手が悪いと思い込んでしまうこともあるため、クレーマーではないかどうかを、一度冷静に考えてみてください。
- 相手の言っていることが正しい
- 文句ではなくアドバイス
- 利用者の家族からの要望である
本記事では、上記のようなパターンについて説明します。
その1.相手の言っていることが正しい
自分は正しいと思い込んでいると、相手が正しいことを言っていても気づかないことがあります。
たとえば、以下のようなことが当てはまります。
- 訪問介護員の都合でコロコロ担当が変わることへのクレーム
- 事業所の都合で必要な時間に訪問介護員を配置できないことへのクレーム
これらは、自分が正しいと思っている人の場合「そんなこと言ったって、こっちにも事情があるから」と思ってしまいやすいです。
しかし、訪問介護は利用者さんの自宅に出向いて、よりよい生活ができるようにサポートする仕事です。
自分の都合を優先したり、事業所の都合で必要なときに必要な人材を配置できなかったりすると、クレームが入って当然といえるでしょう。
相手が言っていることが正しいのか、一度考えてみることも大切です。
その2.文句ではなくアドバイス
文句やクレームを言われたと感じたときには、一度内容を思い出してみてください。
- 訪問介護員の対応や態度に対して指摘をしてくれている
- 事業所の対応やケア内容に対しての意見をくれている
上記のようなケースでは、クレームではなく一消費者としての貴重なアドバイスである可能性が高いです。
訪問介護員に感謝をしていて、事業所ともっとよいお付き合いをしたいからこそ、このようなアドバイスをする人もいます。
利用者であれ家族の人であれ、指摘されたことが本当にクレームなのかを考えてみましょう。
その3.利用者の家族からの要望である
実際にサービスを利用している利用者さんではなく、家族の人から要望が入ることもあります。
たとえば、以下のようなものです。
- 家族から「もう少し改善してほしい」というような要望がある
- 単純にサービスがよりよくなるようにアドバイスをしてくれている
「もう少し〇〇なサービスがあれば嬉しい」「訪問介護員さんの〇〇なところを直したらもっと頼りになる」というような、要望の可能性があります。
何でもクレームと決めつけてしまうと、訪問介護員や事業所が成長する機会を失いかねません。
要望を取り入れながら成長していける、アドバイスを真摯に受け止められる訪問介護員であり、事業所であることを意識してみてください。
そうすると、クレーマーではない人の見分けがつきやすくなります。
4.訪問介護におけるクレーマーへの正しい対処法
正真正銘のクレーマーと出会ってしまった場合には、正しく対処する必要があります。
もし相手の言いなりになるようなら、変な噂を流されたり、理不尽な要求がエスカレートしたりしてしまうこともあるかもしれません。
酷い場合には、退職に追い込まれることも考えられます。
余計なトラブルに発展させないために、訪問介護におけるクレーマーへの正しい対処法を理解しておきましょう。
具体的には、以下の3つの対処法があります。
- 事業所の規約や契約内容を見返す
- 理不尽な意見かを再度確認し直す
- 怪我をしたら診断書を用意する
それぞれについて、詳しく説明します。
対処法1.事業所の規約や契約内容を見返す
クレームを受けたら、事業所の規約や契約内容を見直してみてください。
相手が理不尽な要求や事業所のルール、契約内容に反する事柄を、押し通そうとしているのかもしれません。
反対に、家族や利用者さんが言っていることのほうが、正しい可能性もあります。
事業所の規約や契約内容に沿った対応でクレームが来たのであれば、訪問介護員として間違った対応はしていません。
冷静に考え、要求を鵜呑みにしないようにしてください。
対処法2.理不尽な意見かを再度確認し直す
クレーマーだと思っていても、じつはクレーマーではないケースもあります。
そこで、本当に理不尽な意見かどうか、一度確認し直してみることが大切です。
仮に、事業所や訪問介護員に原因があるにもかかわらず、まったく認めないとなると問題でもあります。
判別がつきにくいときには、事業所の人やケアマネジャーに相談してください。
一人で判断するよりも、より客観的な判断ができます。
対処法3.怪我をしたら診断書を用意する
暴力を振るわれたり、物を投げつけられて怪我をした場合には、診断書を用意しましょう。
何の書類もなしに暴力を振るわれたと言っても、「ぶつけただけでしょう?」と言われてしまっては泣き寝入りです。
暴力を受けた場合には、暴行罪(刑法208条)及び傷害罪(刑法204条)に該当する可能性が高いです。
怪我をするような事態に発展した場合、利用者さん宅から速やかに事業所に戻り、事情を説明して病院に行ってください。
5.訪問介護におけるクレーマー対応の注意点
訪問介護員や事業所が行うクレーム対応には、注意点が5つあります。
- 一人でクレーム対応しない
- 話を聞くときには近くに物を置かない
- 密室ではない場所で話をする
- あらかじめ録音しておく
- 必要であれば弁護士対応へ切り替える
クレーマーと対峙するときには、自分や事業所が不利な立場になったり、危険な目にあったりしないような動きを優先させましょう。
それでは、ここからは具体的な内容を説明します。
注意点1.一人でクレーム対応しない
一人でクレーム対応すると、とっさのときに誰にも助けてもらえません。
仮に、「一筆書いて」と言われた場合にも、うまく拒否できずにサインしてしまう可能性があります。
しっかり「NO」と言える人なら、問題ないかもしれません。
しかし、毅然とした態度でクレーム対応できない人は、一人の対応を避けたほうが無難です。
相手の要求どおりにサインすると、無理を言っても要望がとおると思われてしまい、エスカレートする可能性が高くなります。
無理をせず、事業所の人やケアマネジャーに相談をして、対処してもらえるよう伝えてください。
注意点2.話を聞くときには近くに物を置かない
クレーマーのなかには、物を投げつけてくる人も存在します。
話をしているうちにヒートアップしてしまい、話を聞いているにもかかわらず物を投げつけてくるかもしれません。
話をする際には、近くに尖ったものや重いもの、危険なものを置かないことが大切です。
自分の身を守り、安全にクレーム対応を行うポイントとして覚えておきましょう。
注意点3.密室ではない場所で話をする
密室での話は、できるだけ避けてください。
密室での話し合いの場合、クレーマーが言いたい放題になる可能性があります。
怒鳴りつけたり、大声で罵倒したりと、話し合いとは言えない状況になることも考えられるでしょう。
密室ではなく、人が多いカフェや飲食店、事業所内などで話し合うことをおすすめします。
このとき、上司またはケアマネジャーに同席を頼むと、より安心です。
注意点4.あらかじめ録音しておく
話をする際には、あらかじめ録音しておくことをおすすめします。
どのような点が問題だったのかを後から振り返るだけではなく、「言った・言っていない」問題になりにくいからです。
もし、訪問介護事業所や訪問介護員に対して、脅したり、暴言を吐かれたりした場合でも、証拠として残せます。
録音を事前にクレーマーに伝えておくと、落ち着いた話し合いになりやすいためおすすめです。
注意点5.必要であれば弁護士対応へ切り替える
他人に入ってもらったほうがよいと判断できる場合は、対応を弁護士に依頼しましょう。
以下のような要求があった場合には、弁護士に相談すると手っ取り早く解決しやすくなります。
- お詫びとして無償でのサービス提供を要求された
- 週に〇回の直接面談を要求された
このような場合に、「はい、わかりました」と素直に聞き入れてしまうと、クレーマーの思うつぼです。
顧問弁護士ではなく、スポット依頼が可能な弁護士もいます。必要なときには頼ることも、検討してみてください。
上司やケアマネジャーに相談して、こうした方法も検討したいことを伝えるとスムーズです。
まとめ:クレーマーと思いこまず対処法を覚えて実践
訪問介護員や事業所に対して、理不尽な要求や暴力をふるう人はクレーマーです。
訪問介護は商品の販売や飲食の提供よりも、より密接な生活レベルで関わりをもつ仕事であるため、クレームから逃れることは難しいでしょう。
しかし、すべての人がクレーマーと思い込んで対応すると、自分自身や訪問介護事業所の成長の機会を逃したり、貴重な顧客を失うことにもつながります。
正しい対処法を覚えて、見極めることが大切です。
人との関わりは、訪問介護では欠かせません。
つながりを大切にしながら、正しい対処で自分や事業所、利用者さんを守れるようにしておきましょう。