訪問介護の坐薬挿入は医療行為?確認ポイントと入れ方を解説
「訪問介護のときに利用者さんに坐薬を挿入してもよいのかな?」とお調べですね。
過去には医療行為に含まれていた坐薬の挿入ですが、2005年以降は医療行為から外されています。
しかし、坐薬の挿入をおこなうときには、知っておかなければならないポイントがあるので注意が必要です。
今回「みーつけあ」では、訪問介護で坐薬を挿入する際の確認事項や、坐薬の正しい入れ方を紹介します。
坐薬の挿入について理解して、安心して業務に取り組みましょう。
1.訪問介護で坐薬挿入はしてもよい?
まず、結論からいうと「訪問介護で坐薬の挿入」は認められています。
なぜなら、2005年に坐薬の挿入は医療行為から外されているからです。
ただし、利用者さんの状態について、以下の条件を満たしていると医師や看護職員が確認した場合に限られているので、注意が必要です。
- 利用者さんの容態が安定している
- 容態について医師や看護職員の経過観察が必要ない
- 肛門から出血するというような専門的配慮が必要ない
坐薬の挿入を利用者さんからお願いされたときに、必ずしもすべての条件が満たされているとは限りません。
条件を満たしているのかを確認したうえで、坐薬の挿入をおこなうようにしましょう。
補足:坐薬挿入は医療行為ではない
厚生省によると、坐薬の挿入は医療行為ではないため、訪問介護の際にもおこなってよいとされています。
しかし、2005年に医療行為から除外される前までは、医療行為に含まれていました。
そのため、医師以外が医療行為をしてしまうと、法律違反で処罰されてしまいます。
ですから、医療行為の線引が難しいなか、坐薬の挿入や切り傷への処置などの日常的な行為について、利用者さんと介護職員の間で問題になることがよくありました。
こうした背景によって、2005年に以下の一部の医療行為についての規制が緩和されて、介護職員が対応できるようになった流れです。
- 脇下や外耳道での体温計測
- 自動血圧測定器での血圧測定
- パルスオキシメータの装着
- 軽微な傷ややけどへの処置
- 皮膚への軟膏の塗布
- 皮膚への湿布の貼り付け
- 点眼薬の点眼
- 一包化されている内用薬の内服
- 肛門から坐薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴射
参考:医政発第 0726005号 平成17年7月26日 各都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長(公印省略)
5〜10の行為については、先ほどお伝えした3つの条件を満たしている必要がありますが、介護職員のできることが大きく広がったことがわかります。
2.訪問介護で坐薬挿入する前の確認事項
訪問介護で坐薬を挿入する前には、以下の3つのポイントについて確認しておきましょう。
- ケアプランに含まれているか
- 坐薬の種類はどのようなものか
- 坐薬の順番は適切か
これらのポイントを先に確認しておかなければ、利用者さんとトラブルになってしまうかもしれません。
それぞれのポイントについて、順番に見ていきましょう。
確認1.ケアプランに含まれているか
まずは、ケアプランに含まれているのかを確認してください。
訪問介護のときにおこなってもよいのは、ケアプランで決まっている行為のみです。
ケアプランに書かれていないサービスは、たとえ利用者さんに頼まれても勝手に提供できません。
坐薬の挿入も同様で、ケアプランに含まれていないなら断るようにしましょう。
ケアプランに坐薬の挿入を含めたほうがよさそうなら、責任者に相談してケアプランの見直しをしてもらいます。
ただし、緊急時はその場で責任者に連絡を入れて確認してください。
確認2.坐薬の種類はどのようなものか
次に、坐薬の種類はどのようなものなのかを確認しておきます。
坐薬は直腸や膣に用いる外用薬の総称ですが、形や効果はさまざまです。
事前にどのような形で、どのような効果をもたらすのかを理解しておくことで、スムーズに坐薬を挿入できるでしょう。
ただし、膣錠は坐薬の一種ですが、介護職員は挿入できません。
なぜなら、膣錠の挿入は2005年以降も医療行為に含まれているためです。
膣錠の挿入を利用者さんに頼まれても、行わないように注意してください。
確認3.坐薬の順番は適切か
最後に、坐薬の順番は適切かどうかも確認しておかなければなりません。
挿入する坐薬が一種類だけなら、確認の必要はないです。
しかし、複数の坐薬を挿入する場合には、適切な順番を理解したうえで挿入に臨みましょう。
たとえば、水溶性の坐薬と油脂性の坐薬を挿入するときには、水溶性の坐薬を先に入れて30分以上経ってから油脂性の坐薬を入れます。
水溶性の坐薬は、ダイアップやナウゼリン、油脂性の坐薬はカロナールやボルタレンなどです。
なぜ水溶性の坐薬が先なのかというと、油脂性の坐薬を先に入れてしまうと、水溶性の坐薬に含まれる成分の吸収が妨げられるためです。
そうすると、坐薬で期待できる効果を発揮できなくなります。
ちなみに、同じ種類の坐薬なら1つ目を入れたあと、5分ほどあけてから次の坐薬を入れるのであわせて覚えておくとよいでしょう。
さらに、坐薬の効果によって例外的な指定がある場合も考えられます。
挿入前に、順番や入れるタイミングについて確認するようにしてください。
3.訪問介護での坐薬の入れ方
いままで、誰かに坐薬を入れたことがない人も多いでしょう。ここで、訪問介護での正しい坐薬の入れ方を紹介します。
まず、利用者さんには排便を済ませてもらい、介護職員は手を洗ってください。
そして利用者さんに横向きに寝てもらって、足を軽く曲げてリラックスするように伝えます。
坐薬は使用の直前に取り出して、とがっている部分を先端にして後ろ側を持ちましょう。
指の第一関節くらいまで指先で押していき、肛門内に4cm以上入れると完了です。
そのまま横になった姿勢を保ちながら、ゆっくりと利用者さんに足を伸ばしてもらえば、さらに奥に坐薬が入っていきます。
もし、指先で押すときにうまく入らないなら、ベビーオイルやワセリンなどを塗ってから入れるとスムーズに入りやすいです。
また、口呼吸を意識してもらうことで余計な力が抜けて挿入しやすくなります。
坐薬を挿入してからは、呼吸や体温といったバイタルサインをチェックするようにしてください。
訪問介護の坐薬挿入に関連してよくある疑問
最後に、訪問介護で坐薬の挿入に関連しているよくある質問を紹介します。
- 訪問介護ヘルパーができないことを一覧で知りたい!
- 訪問介護ヘルパーの医療行為に当てはまるものは?
- 介護福祉士だと医療行為ができる?
これらの質問と回答を押さえておけば、よりいっそう理解が深まります。
それぞれの質問について、順番に見ていきましょう。
Q1.訪問介護ヘルパーができないことを一覧で知りたい!
A.研修を受けていなければおこなえない行為があるので、確認しておくことをおすすめします。
坐薬の挿入は、条件を満たせば可能でしたが、訪問介護ヘルパーができないことについてさらに知っておきたい人は多いでしょう。
「訪問介護のヘルパーがやってはいけないこと・できないことについて解説!」では、訪問介護ヘルパーがやってはいけないこととやっていいことをまとめているので、読んでみてください。
Q2.訪問介護ヘルパーの医療行為に当てはまるものは?
A.坐薬の挿入が訪問介護ヘルパーでもおこなえる理由は、医療行為ではないからです。
逆に、医療行為とされていることはおこなえないので、注意しなければなりません。
「介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて」では、どの行為が医療行為でどの行為は医療行為ではないのかをまとめているので、読んでみてください。
Q3.介護福祉士だと医療行為ができる?
A.「介護福祉士になれば医療行為ができる」とお考えの人もいますが、介護福祉士でも医療行為は認められていません。
ただし、決められた研修を受けることによって、痰の吸入や胃ろうの注入ができるようになります。
「介護福祉士(介護職員)は喀痰吸引研修を受けることで仕事の幅が広がる!」では、介護福祉士が研修を受けるとできることを紹介しているので、読んでみてください。
まとめ:坐薬挿入では利用者さんへの配慮も忘れずに
今回は、訪問介護の際の坐薬の挿入について紹介しました。条件を満たすことで、訪問介護職員による坐薬の挿入が認められています。
坐薬の挿入自体は手順を押さえていれば難しくありません。しかし、常に利用者さんへの配慮を忘れないことが最大のポイントです。
利用者さんの様子を見たり、コミュニケーションを取ったりしながら、安全に坐薬の挿入をおこなってください。