訪問介護でバイタル測定はできる?【医療行為にあたるか徹底調査】
「訪問介護ヘルパーはバイタル測定ができるの?」
「バイタル測定は医療行為にあたる?」
利用者の健康管理に欠かせないバイタル測定ですが、訪問介護ヘルパーがおこなうと医療行為にあたるのでしょうか。
じつは、2005年より一部の医療行為を訪問介護ヘルパーができるようになりました。
そのなかにはバイタル測定も含まれていますが、具体的にはどのようなことをするのか気になる人もいるはずです。
今回「みーつけあ」では、訪問介護ヘルパーがおこなえるバイタル測定の内容や医療行為のグレーゾーン、対応できない医療行為を頼まれたときの対処法などを紹介します。
バイタル測定の内容や医療行為を理解して、実際に訪問介護の現場でスムーズに対応できるように予習しましょう。
1.訪問介護ヘルパーはバイタルを測定できる
厚生労働省は、2005年から一部の医療行為を除外したため、訪問介護ヘルパーはバイタル測定ができるようになりました。
いままで医師や看護師しかできなかった医療行為が、訪問介護ヘルパーでもできるようになった背景には、以下の2つの理由があります。
- 高齢化が進み、医療行為を必要とする利用者が増えたから
- 医療技術の進歩によって、医療器具をつけたまま在宅で生活できる人が増えたから
しかし、バイタル測定で使用する機械は、水銀血圧計ではなく「電子機器」に限ります。
介護現場でできる医療行為が明確化されたことで、介護業務もスムーズにおこなえるようになりました。
2.訪問介護ヘルパーができるバイタル測定の内容
実際に訪問介護ヘルパーがおこなえるバイタル測定の具体的な内容は、以下の3つです。
- 体温の測定
- 血圧の測定
- 脈拍・血中酸素緩和度の測定
体温や血圧、パルスオキシメーターを利用した血中酸素飽和度の測定などは、日常的に対応できる医療行為です。
バイタル測定の内容を把握して、現場で活かせるように覚えておきましょう。
その1.体温の測定
まず1つ目は、体温の測定です。
主に以下の2つの方法で計測します。
- 水銀体温計・電子体温計による脇の下から測定
- 耳式電子体温計により外耳道から測定
どちらの方法を利用しても問題ありませんので、利用者さんの状態をみて適切なほうで測定をしましょう。
厚生労働省の「在宅療養技術指導マニュアル」によると、一般的な平熱は36〜36.9度が目安で、体温は朝が1番低く夕方にかけて上昇する傾向があります。
その2.血圧の測定
そして2つ目は、自動電圧測定器により血圧の測定ができます。
血圧が高いと、脳卒中や心臓病のリスクが高くなるため、高齢者はとくに気をつけなければいけません。
70〜80代の血圧の正常値は、以下のとおりです。
正常値(70〜80代) | |
最大血圧 | 145〜150 |
---|---|
最小血圧 | 75〜85 |
しかし血圧は個人差があるため、利用者さんの普段の数値と比べて判断してください。
その3.脈拍・血中酸素飽和度の測定
そして3つ目は、パルスオキシメーターを装着して、動脈血中酸素緩和度と脈拍を測ることです。
最近では新型コロナウイルスの流行により、肺炎の早期発見に役立つ「パルスオキシメーター」という言葉だけは聞いたことがある人もいると思います。
パルスオキシメーターとは、血中酸素緩和度と脈拍数を、採血せずに測定できる機械のことです。
正常な血中酸素緩和度と、脈拍は以下のとおりです。
正常値 | |
酸素緩和度 | 90〜100 |
脈拍 | 50〜80回/分 |
血中酸素緩和度とは、肺の中にある酸素を血液中にどれだけ取り込んで、身体に運べているかを調べる指針です。
数値が低いと、肺に酸素を取り込めていないことになります。
補足:バイタル測定以外のグレーゾーン
訪問介護ヘルパーができる医療行為には、いわゆるグレーゾーンにあたるものもあります。
たとえば、以下のような行為です。
軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
軽微の傷であれば、訪問介護ヘルパーでも治療はできますが、軽微の具体的な基準はありません。
そのため治療の可否は、訪問介護ヘルパーの判断に委ねられてしまいます。
このように、医療行為から除外されたものの条件付きのものが多く、微妙な判断は訪問介護ヘルパーがしなくてはいけません。
介護士がおこなえる範囲なのか微妙なときは、自己判断せず事業所に相談してください。
判断を間違えると、取り返しのつかない医療事故につながる可能性があります。
3.訪問介護のバイタル測定に対応できないときの対処
訪問介護のバイタル測定に対応できないときの対処法は、以下の3つです。
- ケアプランにないことはできない旨を伝える
- 訪問介護ヘルパーができない医療行為を共有する
- 利用者だけでなく家族にも伝えておく
バイタル測定は訪問介護ヘルパーでもできますが、利用者さんから依頼されたらおこなうわけではありません。
対応を曖昧にせず、きちんと断るようにしましょう。
対処法1.ケアプランにないことはできない旨を伝える
まず1つ目の対処法は、訪問介護ヘルパーはバイタル測定に限らずケアプランにないことはできない旨を伝えることです。
利用者さんが訪問介護でバイタル測定ができることを知って、依頼してくるかもしれません。
ただ単に「できません」と断るのではなく、「介護サービスの内容は、ケアプランで決められているのでできません」ときちんと伝えましょう。
もし、頼まれた内容がケアプランにないが、利用者さんには必要だと感じた場合は、ケアマネジャーに伝えてケアプランを再検討してもらってください。
対処法2.訪問介護ヘルパーができない医療行為を共有する
2つ目の対処法は、訪問介護ヘルパーができない医療行為は利用者さんと共有する方法です。
バイタル測定や軽微な傷の処置など、一部の医療行為がおこなえるので、ほかの医療行為も依頼される場合があります。
たとえば、インスリンの注射です。
インスリンの注射は、利用者さん本人や病院で指導を受けたご家族でも打てます。
訪問介護ヘルパーにもできると思われやすいですが、こちらは医療行為になるので打てません。
できないことを口頭で伝えても理解してもらいにくく、何度も伝えなければいけない場合もあります。
何度も伝えても理解してもらえない場合は、書面で訪問介護ヘルパーができる・できない医療行為を説明しましょう。
書面だと目で見て確認できるので、利用者も依頼しやすくなります。
対処法3.利用者だけでなく家族にも伝えておく
最後の対処法は、利用者さんだけでなく家族にも伝えておくことです。
利用者さんのなかには認知症の人もいるため、何度も説明を繰り返さなければいけない場合があります。
書面で渡しても、その書類すらどこに片付けたのか分からなくなってしまう可能性があるので、必ずご家族にも伝えるようにしましょう。
訪問介護ヘルパーのバイタル測定に関するQ&A
最後は、訪問介護ヘルパーのバイタル測定に関するQ&Aを3つ紹介します。
- バイタル測定は生活援助の利用者さんにはしなくてもよい?
- 訪問介護計画書に「バイタルチェック」と記載してもよい?
- 訪問入浴ヘルパーは入浴介助前にバイタル測定は必須?
バイタル測定は訪問介護ヘルパーができる医療行為ですが、おこなうタイミングや記載の仕方など分からないことがあるかと思います。
順番に回答していきます。
Q1.バイタル測定は生活援助の利用者さんにはしなくてもよい?
A.支援内容に関係なくケアプランにある場合は、バイタル測定をしてください。
バイタル測定は健康を管理するものなので、生活援助や身体介護に関わらずケアプランにあれば必ずしなければいけません。
Q2.訪問介護計画書に「バイタルチェック」と記載してもよい?
A.バイタルチェックは医療行為にあたるため、医師や看護師にしか記載できません。
訪問介護計画書には「健康チェック」と記入しましょう。
Q3.訪問入浴ヘルパーは入浴介助前にバイタル測定は必須?
A.必須です。
若い人にはなんてことない入浴ですが、高齢者にとっては思いのほか体力を消費します。
そのため、バイタル測定は欠かせません。
体調が悪いときに無理に入ってしまうと、命に関わる危険性があります。
数値がいつもより低い場合は無理に入らず、清拭をするといった臨機応変な対応をしましょう。
まとめ:訪問介護ヘルパーは電子機器ならバイタル測定可能
今回は、訪問介護ヘルパーのバイタル測定について解説していきました。
本来であれば医療行為は、医師又は歯科医師、看護師しかできませんでしたが、2005年より一部の医療行為がおこなえるようになりました。
訪問介護ヘルパーであれば、電子機器を使ってバイタル測定が可能です。
バイタル測定は利用者の健康を管理する重要なものなので、訪問介護ヘルパーは責任を持って計測をおこないましょう。