訪問介護でガーゼは交換できる?医療行為の範囲に注意
「訪問介護でガーゼ交換はできるの?」
「ガーゼ交換は医療行為に当たらない?」
このように、ガーゼ交換に対して疑問や不安を持つ訪問介護員は多いです。
医療行為に当たるのかといった悩みには、神経を使いますよね。
日々の介護業務中のガーゼ交換は、医療行為になる場合もあります。
今回「みーつけあ」では、訪問介護におけるガーゼ交換について紹介します。
ガーゼ交換できない場合の対処法まで解説するので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護のガーゼ交換は特定の範囲で可能
訪問介護におけるガーゼ交換は、明確に線引きがされていません。
なぜなら、ガーゼ交換が医療行為になるケースと、必要な援助として認められる場合があるためです。
大前提として、訪問介護員は医療行為ができません。
そのため、医療行為に当てはまらないことだけが、訪問介護員ができる範囲となります。
厚生労働省の解釈によると、以下の3点が訪問介護員でも処置できるとされています。
- 軽微な擦り傷
- 軽微な切り傷
- 軽微なやけど
参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
軽微なケガでは、付着した血で汚れた程度のガーゼ交換が認められます。
2.訪問介護のガーゼ交換で褥瘡の処置は不可
褥瘡(じょくそう)のガーゼ交換は、訪問介護員はおこなえません。
褥瘡は、ガーゼ交換をおこなう際に、専門的な知識や経過観察が必要な医療行為です。
状態の進行を把握して、処置をする必要があります。
利用者さんから、褥瘡のガーゼ交換を依頼されても、医療行為のためできないと伝えましょう。
そもそも褥瘡とは?
褥瘡は、身体の一部に圧力が継続的に加わることで血行が悪くなり、皮膚から皮下組織までが壊死する疾患です。
寝たきりに近い高齢者は、体圧を分散するために、専用のマットを使うこともあります。
同じところに圧がかかり過ぎないために、数時間おきに体位交換するのも効果的です。
褥瘡の処置は、厚生労働省の通知でも訪問介護員でおこなえる行為に除外されています。
もし、対応に困ったときは訪問介護員一人で抱え込むのはやめましょう。
現場は一人仕事ですが、先輩・上司・ケアマネジャーに相談して判断を仰ぎましょう。
3.訪問介護で知っておきたい医療行為の範囲
訪問介護員は、利用者さんの状態が安定している場合のみ、以下の医療行為ができます。
内容 | |
体重測定 | 水銀体温計・電子体温計による腋下体温測定 耳式電子体温計による外耳道体温測定 |
血圧測定 | 自動血圧測定器による血圧測定 |
動脈酸素飽和度測定 | パルスオキシメータ装着による酸素飽和度測定 |
ケガの処置 | 軽微な切り傷・擦り傷・やけど など ※専門的な判断や技術を必要としない処置 |
参考:医政発第 0726005 号 平成17年7月26日 各都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長
日々の観察でいつもと違う様子が見られる場合は、早急に事務所やケアマネジャーと共有しましょう。
また、医療行為に当てはまらないものの、医療的なケアとしてできることを、以下の表にまとめました。
内容 | |
爪切り | 爪に異常が見られない・爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がない場合のケア 糖尿病等の疾患に伴う管理が必要でない場合のケア |
口腔ケア | 重度の歯周病がない場合の日常的な口腔ケア |
耳垢除去 | 耳垢塞栓の場合を除いた耳垢の除去のケア |
ストーマパウチ汚物除去 | ストーマ装着のパウチに溜まった排泄物を捨てるケア (肌に接着したパウチの取り換えを除く) |
カテーテルの準備 | 自己導尿をするためのカテーテルの準備のケア |
浣腸 | 市販の浣腸器での浣腸のケア |
参考:医政発第 0726005 号 平成17年7月26日 各都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長
以下の4点は、日常生活に必要な項目です。
- 爪切り
- 口腔ケア
- 耳垢除去
- パウチ汚物除去
こうした介護業務で、状態変化がある場合は早急に共有しましょう。
足の爪や口腔内の状況は、とくに外からは見えにくい箇所です。
現場の最前線に立つ訪問介護員が、変化を捉えやすいところです。
カテーテルの準備 | 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備・体位の保持。 |
浣腸 | 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器。 ※挿入部5〜6cm程度以内。グリセリン濃度50%。 成人で40g以下。 |
参考:医政発第 0726005 号 平成17年7月26日 各都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長
排尿や排便のコントロールは大切ですが、羞恥心が現れやすい介護場面です。
利用者さんの心理的影響に配慮しましょう。
「みーつけあ” rel=”noopener” target=”_blank”>みーつけあ」では、訪問介護の医療行為について詳しく書いている記事がありますので、ぜひご覧ください。
補足:介護福祉士のみが対応できる医療行為
医療行為は、医師または歯科医師、看護職員しかできません。
しかし、「介護保険法の一部改正」により、平成27年以降は条件付きで介護福祉士ができる医療行為が明示されました。
介護福祉士ができる医療行為は、以下の2点です。
- 喀痰吸引
- 経管栄養
そのため、介護福祉士であり専門的な研修を受講することで、喀痰吸引と経管栄養の対応が可能となりました。
実施可能になったとはいえ、利用者さんの命を預かる行為でもあります。
精神的に緊張する業務ですが、利用者さんが地域で安心して生活するための大切な業務です。
4.訪問介護でガーゼ交換できない場合の対処法
訪問介護のガーゼ交換は、できる範囲とできない範囲に分かれています。
利用者さんやご家族にとっては、なかなか線引きが分かりにくいところです。
介護職員でも難しい医療行為の線引きであるため、説明が難しい場合もあるでしょう。
訪問介護員として築いた信頼関係を失わずに断るポイントを、以下の順番で解説します。
- 嫌味なく断るポイント
- 関係者共有のポイント
ぜひ参考にしてください。
(1)嫌味なく断るポイント
ポイントは気持ちを受容した後に、医療行為だからと理由を説明し断ることです。
できる・できないと率直に伝えると、冷たいと思われたり、「あの人はお願いしてもやってくれない」とマイナスイメージがついたりするからです。
処置はできないと伝えながら、「毎日お辛いですね」と気持ちに共感しながら、ケアマネジャーに相談する旨を伝えましょう。
すると、「できないけど見捨てなかった」「ケアマネジャーと一緒に考えるように運んでくれた」と、プラスの気持ちが追加されます。
ぜひ、試してみてください。
(2)関係者共有ポイント
利用者さんを支えるためには、さまざまな関係者がいます。
各事業所が、専門性を発揮してチームケアをするために、情報共有が必要です。
チームケアをするために、利用者さんを中心とした関係者の輪を強化しましょう。
ご家族との共有のポイントは、医療行為は行えないと説明することです。
ご家族 | サービス提供責任者 | ケアマネジャー |
・医療行為の説明 ・ガーゼ交換の方法 | ・ご家族からの依頼 ・医療行為の説明の仕方 | ・皮膚状態の報告 ・訪問看護の必要性の検討 |
医療行為はどのような行為かということを、具体例を示すことが重要です。
そして、傷口の処置等、医療行為をご家族から依頼されたら、その事実を早い段階でサービス提供責任者へ伝えましょう。
事業所内の連携が取れていないと、利用者さんやご家族の不信が募ることもあります。
サービス提供責任者という看板が、利用者さんやご家族に伝わりやすくなることもあります。
ケアマネジャーは、ケアチームの調整をしたり、コーディネートする立場です。
困ったことの相談はもちろん、利用者さんの状態変化があればサービス担当者会議を開催できます。
サービス担当者会議にて、さまざまな立場の視点から問題解決の糸口を探れるでしょう。
まとめ:訪問介護のガーゼ交換は範囲を守ろう
これまで、訪問介護のガーゼ交換について紹介してきました。
ガーゼ交換は、訪問介護員でできる範囲と、医療行為のためできない範囲に分かれます。
利用者さんや、ご家族からしたら、「ガーゼ交換くらい簡単じゃない?」と思うかもしれません。
しかし、訪問介護員はあくまで介護専門のプロです。
プロとして正しい判断と線引きをし、利用者さんの安心した地域生活を支えましょう。